大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 平成4年(行コ)11号 判決 1992年10月22日

鹿児島県鹿児島郡桜島町松浦二番

控訴人

李信子

右訴訟代理人弁護士

亀田徳一郎

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

被控訴人

右代表者法務大臣

田原隆

右指定代理人

辻三雄

白濱孝英

樋口貞文

内藤幸義

荒津惠次

福田寛之

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人は、控訴人に対し、金五二一一万九八六五円及びこれに対する平成二年二月一〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

四  二項についての仮執行の宣言

第二事案の概要

原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。

第三争点に対する判断

一  当裁判所も控訴人の請求は理由がなく、棄却すべきものと判断する。その理由は次に付加するほか原判決の示すところ(原判決三枚目表一〇行目冒頭から四枚目裏四行目末尾まで、ただし、同四枚目表一一行目の「身集」を「民集」と訂正する。)と同一であるから、これを引用する。

なお、本件では、控訴人は、単に昭和四六年、同四七年において株式売買の事実はない旨主張し、その証拠として控訴人名義の株式の売買をしていないこと、控訴人名義で利益がないこと等を証明する旨の大阪屋証券株式会社福岡支店長岩本政和名義の文書(甲四)を提出する。しかし、これをもつてしても、単に大阪屋証券株式会社福岡支店における控訴人名義による株式の売買や利益がないというにすぎないのであるから、控訴人の主張をすべて証明するものとはいえない。かえって、証拠(甲五、六)によれば、昭和四九年四月九日の本件課税処分後に、控訴人は、本件課税処分の対象となった株式売買は控訴人のほか控訴人の子である李博夫及び李博志三名の名義のものであるから、控訴人一人の取引として課税するのは不当である、あるいは、株式運用については息子二名の承諾を得て松元佳子という仮の口座を作って売買しているので、三名の取引であり、これについて控訴人個人に課税することは納得できないなどと記載した同年七月三日付け及び昭和五〇年三月一五日付け各文書を福岡税務署長宛に提出していることが認められ、この記載内容からすると、控訴人の主張とは異なり、本件課税処分の課税用件となった株式取引の存在やその取引が控訴人の株式取引であると福岡税務署長により認定されるに至った事情の存在も窺えるところである。したがって、本件においては、本件課税処分の無効主張が許される課税要件の根幹に関する内容上の過誤が存し、前記のような被課税者に右処分による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的事情のある場合に当たるものとは考えられず、本件課税処分の無効をいう控訴人の主張はこの点においても失当である。

二  よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担については、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤安弘 裁判官 松島茂敏 裁判官 中山弘幸)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例